スティーヴン・キング原作短編小説の映画化。監督は同じくキング原作の『ドクター・スリープ』で監督をつとめたマイク・フラナガン。フラナガンは最初ドラマシリーズの『 ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』(映画『たたり』の原作シャーリィ・ジャクスンの『丘の屋敷』をドラマシリーズ化したもの)で知っておもしろいと思って、『ドクター・スリープ』も好きな映画。
以下ネタバレ
映画は第3章から1章まで逆順に語られる。終末を迎えつつある世界に「ありがとう、チャック」という広告が現れ、チャックとは何者なのか、世界の終りの原因は何なのか、謎として提示されるんだけど、映画冒頭の「私の中には複数の人間がいる」というホイットマンの詩、環境破壊だけでは説明がつかない世界の崩壊の理由や夜空の星が電気を消すみたいに消えてしまう様子などから、その答えは映画の3分の1、つまり3章の終わりあたりでみんな気づくんじゃないだろうか。
終わりつつある世界は実はチャックの中にある宇宙で、第3章に登場する人物はチャックが現実世界で出会ってきた人物から創られた存在だったことがだんだんとわかってくる。
第2章、1章ではチャックの幼少期から39歳で死ぬまでが描かれ、第3章で登場した人物のセリフはここから来てたんだ、というのが示される。それがさりげなく示されるというより、はっきりと繰り返されるので、一瞬つまらなく思えもするんだけど、1人の人間のなかには、いままでちょっとすれ違っただけの人物すらも保存されていて、自分の中にも1つの宇宙があるんだろうか、逆に自分もまた誰か他人の中にある宇宙に住んでいるのかと思うと、だんだん感慨深く感じられてくる。
1人の人物の中に無数の人物がいるというのは、なにより原作者スティーブン・キング自身のことでもある。いままで無数の人物がキングの頭の中で生まれてきたわけで、ホイットマンの詩「私自身の歌」はまさにキング自身のことのように思える。原作は2020年、キング73歳の時に発表されていて、自分がもし追悼されるなら、自分の人生を祝福するならどういう形がいいんだろうということが頭をよぎったんじゃないだろうか。
メインのテーマとは関係ないけど、ひどい災害が起こり続け、じわじわと終末に向かっていく様子がリアルで現実世界の状況を思い起こさずにはいられなくて、主人公のお隣さんが世界の終わりを涙ぐみながら嘆くシーンでいっしょに泣きたくなってしまった。

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