『アフター・ザ・ハント』感想

ルカ・グァダニーノ監督の最新作。道徳・倫理がテーマになっているのは間違いないんだけど、登場人物たちが交わす哲学的議論は難解で、とても数十秒では考えが追いつかず、観たあとに哲学書を何冊か読むくらいじゃないと考えがまとまらない。主人公アルマ(ジュリア・ロバーツ)の夫に対する扱いはひどいし(でも夫は一方的な彼女の崇拝者なんだろう)、自分のためなら友人も見捨てる、一見サイコパスのようだけど、彼女が罪の意識に苦しんでるのは間違いない。感情は夫にも明かさず、自分を罰するように激痛があるのに病院にも行かない(そのせいで鎮痛剤を違法に入手して大学の終身在職権を失う)。

たぶんマギーの告発(ハンクに対するものも、アルマに対する”多様性を利用している”とかも)はぜんぶ正しかったんだろう。しかしアルマはキャンセルされるような告発すら利用し最終的には学部長の座におさまる。「すべてを失ったけど、魂は救済されました」というような物語ではなく、魂の幸福もキャリアもどちらも手に入れる、とんでもなくしたたかな女性主人公。でもそれでほんとうに”よい”のか? 観客に考えさせる映画だった

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