ティモシー・シャラメ主演、実在の卓球選手をモデルにしたスポーツ・ドラマ。
スティーブ・ジョブズが強烈なカリスマ性と自信と話術によって、不可能と思われることや技術的限界をも突破させる強引さを現実歪曲フィールドと呼んだりするけど、この作品の主人公マーティはまさにそんな現実歪曲フィールドを使う人物。
卓球選手として世界一になり成功することを信じて疑わず、そのためならなんでもする。
自信過剰だが卓球の実力が世界トップレベルだということは事実で、イギリスの世界選手権で決勝まで進むが、日本人選手の遠藤に完敗してしまう(聴覚障害のある遠藤を演じているのは、実際に聴覚障害のある卓球選手である川口功人)。
遠藤と再選し世界一になるために日本に行く金が必要で、その金を工面するためのなりふりかまわなさがすさまじい。こういう破天荒な人物が主人公の映画だとめちゃくちゃな行動が幸運につながって、金が手に入ったりするものだけど、何度も何度も危ない橋を渡るのだがそれでも金は手に入らない。最終的にはいままでの傲慢さ、プライドをすべて捨て去ることでなんとか日本行きが実現する。
マーティの傲慢さ、周りの人間は利用するためにしか存在していないという態度、とくに幼馴染で人妻のレイチェルへの扱い、妊娠させさんざん振り回しておきながら「おまえのようなその日暮らしじゃなくておれには目的がある」と言い放つなど、とても容認できない。
しかし、プライドだけを賭けた最後の遠藤との試合、彼の傲慢さや自己中心性が溶け崩れていくようなラストのマーティの涙で、最終的には爽やかでなんだか元気が出てくる後味になっている。
最後の遠藤との試合でのマーティの全人生を乗っけたようなプレーは、松本大洋『ピンポン』を思い出させるほどの熱戦で、スポーツ映画としても見ごたえがある。
エンディング・ソングのTears For Fears”Everybody Wants To Rule The World”は青年の歌としかイメージがなかったので、生まれたばかりの赤ちゃんに向けたような解釈は新鮮だった。

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