ダイヤルの運命について
インディがバジル(トビー・ジョーンズ)と最後に会ったとき、「必ず破壊してくれ」という言葉とともにダイヤルを託される。しかし映画のラストでダイヤルはインディのベッドサイドにある。
遺物の扱いといえばシリーズ1作目『失われたアーク』のラストのシーンが印象に残るが、今作ではそういう描写はない。印象的なシーンもなくただ残すかわりに、精神のバランスを崩すほどダイヤルの研究にのめりこんでいたバジルとの約束を守ってダイヤルを破壊すれば、ちょっと感動的な場面になったんじゃないだろうか(歴史的遺物を壊してしまうのはどうかと思わないではないけど、インディのいままでの行動を考えるといまさら……)。
罪もない一般人が殺されすぎ
フォラー(マッツ・ミケルセン)の部下クレーバーは、インディを捕まえるために侵入した大学で目撃者を無造作に殺す。悪者たちの非常さを示すためなのはわかるけど、潜水士のレナルドなど罪もない人たちが何人も殺されるのは、笑いどころもいっぱいあるアクション映画としては非常すぎないだろうか。クレーバーは冷酷に殺そうとするけどそのたびにインディが阻止するのでもよかったんじゃないだろうか。
クレーバー
その冷酷で嫌なやつであるクレーバーが、登場するたびにインディに殴られるのは痛快だけど、最期はあっさりしすぎだと感じた。あれだけ冷酷に無実の人を何人も殺してるんだから、もう少しひどい目にあうところが見たかった。
妻と息子の運命
古代ギリシャにタイムスリップし負傷したインディは、現代に戻ることを拒否する。「歴史が変わってしまうから」と説得しようとするヘレナに対して、「それでなにがいけない?」とまで言うインディをヘレナは無理やり現代に連れ帰る。
現代に戻ると離婚協議中のマリオンが戻ってきている。インディ負傷したのが心配になったからか、あるいは彼が昔のような冒険心を取り戻したから? インディが語るところによると夫婦関係が壊れてしまったのは息子がインディに反発して出兵し戦死したことが原因らしい。それが本当ならマリオンとの仲が修復する理由としては少し弱くないだろうか。
たとえばこんな展開はどうだろうか。インディが現代に戻ると、戦死したはずの息子とマリオンが家に帰ってくる。息子は戦死しておらず夫婦関係の危機もなかった。インディはヘレナがダイヤルを使って過去に戻り息子が出兵しないように説得したのだと悟る。インディはヘレンに詰め寄る。「なんてことをしたんだ。歴史を変えてしまったのか」と詰め寄るインディに対してヘレンは「それでなにがいけない?」と応える。
運命論
インディ、ヘレナ、フォラーたちが物体としての「運命のダイヤル」を追いかけることで、アクションシーンが次々と連続していく。ダイヤルはストーリーを推進させるマクガフィンだ。しかし、運命についての哲学的洞察が示されることはない。人生を決定する運命とは何なのか、運命を変えることは可能か、変えてもいいのかなどなど、作品全体を貫く興味深いテーマになるはずだ。
でも監督や脚本家にいわせれば、いままで書いてきたようなことはぜんぶ検討済みで、上映された内容がベストだということになるかもしれない。いずれにせよ歴史にifはない。それがこの映画の運命だったのだ。
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