伝記映画ではありません/『Shirley シャーリイ』感想と考察

映画

2020年にアメリカ公開されたものがようやく日本でも観れるようになった。

シャーリイ役は2020年版の『透明人間』主演のエリザベス・モス、夫スタンリー役はマイケル・スタールバーグ。監督は

「くじ」や映画『たたり』原作の「The Haunting of Hill House」で有名な作家シャーリイ・ジャクスンが主人公だけど、伝記映画ではない。この映画の原作はシャーリイ・ジャクスンを主人公にした小説で、シャーリイは彼女の作品を擬人化したような存在として描かれている。パンフレットに掲載されている監督や俳優のインタビューを読むと、シャーリイ・ジャクスン自身を彼女の作品世界に放りこんだような映画と表現されている。

夫スタンリーとの関係は複雑で、現実の生活でもシャーリイは夫に愛人がいることを認めていたらしい。スタンリーはシャーリイの一番の理解者でありファンでもあるけど虐待的でもある。そんな夫婦生活や、居候の若い夫婦を二人で操ったり心を弄んだりする様子を毒気たっぷりに描いていて、そのあたりがジャクスン作品ぽい。

実際のシャーリイ・ジャクソンは、エッセイを読んだ印象だともっとユーモアがあってサバサバしていて、この映画のもう一人の登場人物ローズのほうに近かったんじゃないかと思う。

シャーリイ・ジャクソンを二人に分割したのがシャーリイとローズだったんじゃないか――その証拠にローズはシャーリイに作品のインスピレーションを与え、シャーリイはローズに強さを与える。

1950-60年代当時に女性作家であるということに焦点を当て、2人の女性が手を取り合い、夫の無理解や偏見にまみれた世界と共闘する映画だ。

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