wikipedia情報だけど、16歳の時に上京して職を転々としたりという自伝的な内容と虚構を混ぜて描いた漫画。著者の分身が鬼太郎そっくりだったり、水木しげるやつげ義春のパロディをしながら著者自身が漫画家になるまでを描くというような、最初は軽いコメディタッチのものになる予定だったのかもしれない。
2021年11月号から連載が始まって2022年4月号で連載中断。2022年11月号から連載再開されるけど、そのあいだに元首相暗殺事件が起こっている。第1話から永山則夫がモデルと思われる「永山」というキャラクターが出ているから、永山事件と自分の青春時代を同時に描くというのは当初からの構想だったと思うんだけど、第3話の最後で「ピストルのバネの手ざはりやるせなや街のあかりに霧のふるとき」という夢野久作の「猟奇歌」が引用され、永山が拳銃を握る場面が描かれたのは連載中断の前なのか後なのか気になる。
著者が東京に出てきたは1972年で、永山事件は1968年だから実際に著者が出会っていたということはなかったはず。それでも永山事件には強い思い入れがあったのだろうか。永山と主人公ミゲルの関係は『笑う吸血鬼』の本物の吸血鬼になった耿之介と、人外になりたいと憧れながら人間のまま死んでいく外男の関係を思わせる。アングラブームといえば唐十郎や寺山修司だけど、永山則夫は寺山修司を批判する『反―寺山修司論』という本を書いてるらしい。読んでもないのでこれ以上のことはなにもいえないけど。
表紙絵は、主人公2人の上にテープが貼られそれが平面の絵であることが強調されている。この絵は連載開始時の「コミックビーム」の表紙にも使われていて、メタ的な漫画になることは構想されていたはず。しかし結末にむけてだんだんと青春の蹉跌としかいいようがない展開になっていき、ミゲルとサチコの運命は暗い結末を迎える。実際には著者はアングラ劇団に入ったりしながら漫画家としてデビューすることになるけど、そこらへんが描かれる展開も読んでみたかった。
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