ハリウッド俳優の半生を赤裸々に描いたドキュメンタリー/『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』感想

映画

ハリウッド俳優ヴァル・キルマーの半生を描いたドキュメンタリー。

いちばん有名な出演作品はやはりアイスマン役を演じた『トップガン』だろうか。個人的にはロバート・ダウニーJrと共演した『キスキス、バンバン』のゲイの探偵役が印象に残っていて、最近は喉頭がんの治療のせいで声が出なくなっていると聞いていたところにこのドキュメンタリーの存在を知った。観たいと思っていたのだがなかなか日本では公開されず、U-NEXTに入ってようやく観れた。ちなみにA24製作である。

ヴァル・キルマーは、トム・クルーズやドウェイン・ジョンソンみたいなスーパースターだとか、メリル・ストリープやデ・ニーロのようなトップクラスの演技派というわけではないが、若いころから有名な映画に出演し、主演作が何本も作られているという点では恵まれた俳優人生だといえる。

ヴァルは撮影魔らしく、プライベートや撮影の合間など常にビデオを回していて、生い立ちから、当時最年少の17歳でジュリアード音楽院演劇科への入学、卒業後はケヴィン・ベーコンやショーン・ペンとの舞台での共演、ハリウッドでの撮影などなど、ヴァル自身が撮影した映像をふんだんに使って半生が描かれていく。

演技への向き合い方の誠実さ、情熱は伝わってくる。ただその情熱は愚直というか、『アクターズ・スタジオ・インタビュー』出演時の有名な最後の質問「天国に着いたとき、神になんと言われたいか」への答えがちょっとスベってたりして、ここらへんがカリスマ性のある一流の俳優とは違うところなんだなというところも伝わってくる。お調子者でジョーク好きでエネルギッシュ、撮影魔なところはナルシストな性格の表れだろうか。しかし俳優の90%はみんなこんなかんじなのかもしれない。そういう意味で、ハリウッド俳優の人生のひとつのサンプルになっている。

喉頭がんによって声をほとんど失っていても、ジョーク好きだったり、現在はアート作品を制作していたり、才気煥発な性格は失っていない。とはいえ、情熱を注いでいた映画や舞台には参加できず、ファンミーティングやコミコンでサインをする姿には侘しさも感じる。

一人のハリウッド俳優の人生を赤裸々に描いた味わい深いドキュメンタリーだった。

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