相対化されるハードボイルドな男らしさ/『ウルフズ』感想と考察

映画

ジョージ・クルーニーとブラッド・ピット共演で、一匹狼の揉み消し屋(フィクサー)がひょんなことから2人で協力して事態を解決することになる、笑いの要素も多いクライム・サスペンス。

ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットが全編でずっぱりで共演するというのが豪華だし、フィクサーが1人だけならどこにでもあるような映画になるところだけど、2人になることで新鮮に感じられる。”男らしさ”が相対化され現代的にアップデートされているのもおもしろい。

wolfの複数形はwolvesのはずなのに、この作品の原題は”Wolfs”になっている。英語のニュアンスはよくわからないけど、一匹狼が2人いることのおかしさを表しているのか、あるいは2人が相棒になることで”ウルフズ”というチームになるということを表しているんだろうか。

フィクサーとは、ジョージ・クルーニーが2007年の映画『フィクサー』で同じような役を演じているけど、依頼人が厄介な事件に巻きこまれたときに事件の証拠を隠滅したりして助ける仕事人のこと。本作では、地方検事の女性がホテルの部屋で少年と2人きりでいたところ、相手が死んでしまったということでクルーニーが呼び出される。そこにホテルのオーナーから呼び出されたピットが現れ、しかも死んだと思っていた少年が生きていて、3人は陰謀に巻きこまれていくのだが、黒幕が誰かというのは背景に過ぎない。一匹狼が2人いたらどうなるかという一種の分身テーマがメインになっていて、本作の笑いやおもしろさもそこから生まれている。

分身が出会えばお互いを憎みあい、どちらかが死ぬことになる。本作でも2人は出会った当初から反発しあう。クルーニーとピット(2人とも一度も名前を呼ばれない)は服装やしゃべりかたがそっくりで、お互いがお互いのパロディのようになっている。ハードボイルドな生活は男らしくカッコイイかもしれないけど、肉体的には危険だし孤独でわびしく、冷酷に人を殺すことがあたりまえの生活だ。男らしさが彼ら自身を苦しめている。死んだと思っていた少年のまだ”男らしさ”に囚われていない無邪気さに触れたり、鏡像のようにそっくりなお互いを見つめることで、このまま冷たく寂しい人生を送るよりももう少しましな人生の可能性に開かれていく。

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