2024年読んだ本まとめ

読書

今年ベストの読書体験は『ソーンダーズ先生の小説教室』。アメリカの作家であり大学で小説を教えるジョージ・ソーンダーズが、チェーホフやトルストイなどロシアの文豪たちの短編小説がまるごと収録されていて、それぞれの作品を1行単位、1ページ単位で精読しそのおもしろさを教えてくれる。

長編小説でおもしろかったのはカレン・テイ・ヤマシタ、牧野理英訳『三世と多感』。日系アメリカ人三世として、祖父母や親世代とのジェネレーション・ギャップなどをテーマにした短編小説が興味深くかったし、ジェイン・オースティンの作品世界を日系社会に置き換えたパロディ小説もほんとうにおもしろくて、オースティンは『高慢と偏見』くらいしか読んだことなかったけど、こんなにおもしろいなら本家も読んでみたいと思わされた。翻訳にクセがあるけど……。

あと『悲劇喜劇』2024年11月号掲載の「ピローマン」を図書館で一気に読んだのも忘れられない。独裁国家で、凄惨な連続殺人の容疑者として取り調べを受ける売れない小説家。悲惨で残酷な物語ばかり書いている作家は「作品にこめたメッセージなんてない、物語の意味は読者が自由に解釈してくれ」というが、その言葉が最悪のかたちで自分に返ってくる。

今年初めて読了したのはイヴ・K・セジウィック『男同士の絆』だった。かなり難解ですべて理解できたとはとてもいえないけど、2人の男が1人の女性を介して権力や富を交換するというこの本で説かれている構図が、今年観た映画の『ソルトバーン』や『チャレンジャーズ』の構図そのままで、読んでいてよかった。

ジェンダー論の本でいえばジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』『触発する言葉』を読めたのもよかった。こちらも難解さで有名で、一読しただけで理解できたとはいえないけど。

アミンダー・ダリワル、山本みき訳『女だけの世界へようこそ』もおもしろかった。フェミニズム、ジェンダー論テーマのギャグマンガ。

アリアン・シャフヴィシ『男はクズと言ったら性差別になるのか』も感想書いたんだった。

ここ数年、自由意志についての本も読んでるけど、来年出る『道徳的責任廃絶論』という本もおもしろそう。

「なぜアクション映画の主人公は血みどろになり観客はそれを楽しむのか」ということについて考えるための本もずっと読んできたけど、フロイトの「文化への不満」に攻撃欲が制限され内側の自我に向けられると超自我に取りこまれて「良心」となる、超自我と自我との緊張関係から「罪の意識」、自己懲罰の欲求が生まれると書いてあって、とりあえずこれが答えといってもいいのかな。

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